長岡一也の岡目八目 第1回

「レース実況アナウンサーは馬券を買うのか」
皆さんからよく聞かれることです。

まあ、競馬が好きなら、まず買うでしょうね。勿論、私は買います。

日本の競馬は皆さんが買う馬券の売り上げで成り立っているのですから、少しでも買うという行為は、競馬を支えることにつながっていくのです。競馬がいつまでも続いていくように、微力ながら貢献しているつもりなんです。こう言って、胸を張っているのは気分がいいですよ。

このあいだのエプソムC、トーヨーデヘアは東京向きと決めつけている馬で、去年のNHKマイルCでも応援しました。今回、久々にチャンスと狙い、直線内からぐんぐん出てきた時には、ヨシヨシと心で叫びながら馬名を連呼していました。ところが、ゴールまであと50米、その外からスルスルとアドマイヤカイザーが交わして行くではありませんか。ゴールインと叫んでから、頭の中には昨秋の毎日王冠のレーシングフォームが浮かんでいました。トゥナンテの2着、天皇賞出走を逃したあのシーンです。そうだ、あれだけ走った馬だったのだ。うーん、残念、しっかり思い出しておけば良かった、と。

馬券を買うという行為は、しっかりした記憶に結びつくという効用があります。たまたま今回は思い出すのが遅かったのでして、成功する場合だってあるのです。

それに、馬をよく知ることにもつながります。知るは楽しみなりで、競馬を楽しむには少額でもいいですから、馬券を買って参加することでしょう。

さらにもう一点、馬券でやられた痛みを知っているかいないかは、その人間の他人を思いやる気持ちを膨らませていくかいかないかにも通じていくはずです。従って、人の痛み、本当によくわかっているつもりです。


長岡一也の岡目八目 第2回

プロキオンS、また新しいブロードアピールを見ることができました。
ブロードアピールと言えば、根岸Sでの鮮やかな追い込みこそ真骨頂と誰しもが認めていました。まるで瞬時の時間差移動、短距離の追い込みというふれ込みを見事にくつがえしたデザーモ騎手の手綱は、あまりにも強烈な印象を残しています。

名古屋でのかきつばた記念の勝ち方は、先行して早め先頭に立つという積極策、そして今回は、先団の馬群の中で折り合いをつけ、直線は大外に出して一気に抜け出すという戦い方、いずれもブロードアピールの新しい面を見せつけました。特に、今回抜け出してからのピッチ走法は、まるで宙をとぶような軽快さでした。

デザーモ騎手は、来日以来、芝のレースでは外を回ったり、外に出したりする騎乗は、絶対にしなかったのが、ダートでは、砂をかぶるのを避けるような走らせ方で、変幻自在ぶり、さすがと感心させられました。

このように、騎乗技術によって馬の新しい面が引き出されると、可能性を追求する思いは強くなるばかりです。宝塚記念でとりあえずは中央の騎乗は終え、帝王賞で大井に姿を見せる予定。果たして、どんなパフォーマンスを今度はの期待がふくらみます。

いったん騎乗技術が認められると、どんな結果であろうとも素直に受け取ってもいいという思いになります。信頼の手綱、これこそ競馬とつきあう者にとり大切なこと。信用できるできないの境目には、いつも騎手のプレイの良し悪しが存在しています。どうでもいいのではない厳しさ、ひとつひとつのレースには、多くのファンの真剣なまなざしが注がれています。そして、いいプレイには惜しみない拍手を送り、結果を問わず満足をあらわすのです。見応えのあるレースには、騎手の腕の冴えが必ず見られます。勝敗を越えたものを競馬に見つけらたらいいですね。


長岡一也の岡目八目 第3回

この1年、古馬G1戦でことごとくテイエムオペラオーに遅れを取っていたメイショウドトウにとり、今回の宝塚記念はまたとないチャンスだったのでした。それでも戦前は、またこの2頭なのか、そろそろ新しい風が吹かないものかと、変化をのぞむ気持ちをぬぐえずいたのではないでしょうか。

世の中、変化や革新を叫ぶ声しきり。ターフにもそれをのぞんでも異を唱える者はいないはず。ならば何がその旗手になるのか。思いはどんどん道をそれていったのです。だいたいが、いつもこんな調子で、厳しい結果を甘受するばかりなんですが、やはり馬券は下手と言うしかありません。

6度目の正直、こんなことがあるんですね。メイショウドトウの側からすれば、どう乗っても1歩遅れを取ることばかりで、こうなれば、全ての思惑を捨てて立ち向かうしかなかったのでした。そう決めたとき、あの積極戦法が生まれ、全ての伏兵たちがテイエムオペラオーに群がる中、常にそれを尻目に前へ前へと進路をとり、それが悲願達成の道を可能にしたということです。

それにしても、これでは新しい風が吹いたとは言えません。3着のホットシークレットまで5歳馬。そして、4着ステイゴールドにいたっては7歳馬。エアシャカールアドマイヤボスなど4歳馬のレベルでは、秋への大望は無理と言わざるを得ません。変化、変化という思いは、厚い5歳馬の壁の前には、はかないものに終わりそうです。
出よ、新しい星、その一点に救いを求めて見ていくしかありません。夏から秋にかけ奇跡の急成長を遂げる新星の登場を願いつつ、2年目に入ったテイエムオペラオーメイショウドトウ時代に身をおくこの切なさ。多大な賞金をひとり占めにする競馬の流れを断つ瞬間の訪れを待ちましょう。そうでなければ、人の覇気が消えてしまうではありませんか。そろそろが現実になる日はいつのことか。


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