長岡一也の岡目八目 第4回

初めて競馬で福島に来たのが、1962年の夏でした。まだ新潟が再開されていない頃で、真夏の2開催でした。

今でもスタンドから向正面左手の方に見える市民プールで、競馬が終わると泳いだものです。元気が余っていたというか、とにかく楽しくて仕方なかったのだと思います。

そして夜の町に出ると、どこに行ってもレースの話。競馬が、とにかく歓迎されているのです。福島の場長は、日銀の支店長と同格に扱われ、こんなに居心地のいいところはないと、歴代の場長は語ります。

町ぐるみで迎えてくれるので、元気が一層出ていたというところでした。

ところが昨今、ここも御多分にもれずの状況で寂しい限り。シャッターの下りたままの店が目立ち、競馬にもこの雰囲気が影響を与えているようなのです。

立派なスタンド、何の不満もありません。本当に快適です。なのに、どこかしっくりこない、よそよそしい、景気のせいだけなのかと考えてみる必要がありそうです。

建物が巨大になると、どうもその中に競馬が取り込まれてしまっているような、そんな感じになります。身近に馬を見ていた頃の、あの牧歌的な、少しぐらい暑くても、それだからいいと思える、そうした競馬場ではなくなってしまいました。

だからと言って、昔のように戻すことはできません。ならば、今あるものに何をどうつけ加えたらいいか、その方向で何とかしていきたいですね。

よそよそしくなっていくのでは、福島競馬ではなくなります。ネクタイ着用でなくては入室お断りなんていうところから改善し、ものを食べる所にも場内テレビは設置してほしいですね。少しくらい人がたまってもいいじゃないですか。全てサービスが先、経済は後というビジネスの仕組みを、そろそろ競馬にも導入してほしいと願っています。


長岡一也の岡目八目 第5回

新潟・1000mコースの話題でもちきりです。特に、厩舎周辺のみなさん方、折に触れてこの話が出てくるということです。立場により関心の持ち方には微妙な違いがあるようですが、いくらサラブレッドといえどもひと息で駆け抜けることのできる距離ではなく、少なくとも3回は手前をかえる必要があるのではないかという見方が多いようです。

この手前をかえるということ、これまではコーナー回りを意識して行われていたと思うのですが、一直線のコースだと今まで以上に人馬の呼吸が求められるのではないでしょうか。走りやすいのか走りにくいのか、乗りやすいのか乗りにくいのか、人も馬も、直線1000mを走るものにとっての初体験が、どんなレースをつくっていくのか、未知なる部分に踏み込むスリルがあります。

レースと言えば、ただちに実況放送に結びつけられます。普段以上に、どうするのですかと聞かれます。確かにどうにかするのですが、だいたいが実況放送ですから、与えたれた情況を受け入れ、あるがままに放送するというのが基本です。これまで、レース実況がしやすいようにと言う配慮が、この種の施設が変わるときにあった試しはありません。

なしくずしにやっていくのです。それに対して文句やグチを言う者がいたら、それは未熟ものと呼ぶだけです。

と、まあ述べておいて、これまで実況席から一番離れているのが東京競馬場の3コーナーを回ったところで、およそ800mありました。あと200m離れることと、スタンドからほぼ一直線に駆けてくる馬群を正面から見るので、当然ながら遠近感が鈍ります。その点をどうクリアーするかですね。

しかし、そういう心配よりも、また新しい実況放送ができることの方で張り切るべきでしょう。私自身は、収録用にグレードレースはずっとしゃべっていますので、この初体験にファイト満々なんです。


長岡一也の岡目八目 第6回

本邦初、この興奮は押さえがたいものがありました。新潟競馬場ずらり並んだ放送席、どの社も双眼鏡をのぞく姿が。リニューアルされた競馬場の、その初日の第1レースに早速直線1000mがあり、はるか彼方のスタート地点に一斉に目が注がれたのです。

馬を確認する距離の限界はあり、だいたい800m位までという感触をみんなが持っている筈。1983年からレース映像はモニター画面で見ることが出来るようになり、最悪の場合、それを頼りにすればなんとかなるようにはなっています。

ところが今度のケース、それが全然役に立ちませんでした。

スタートして、まずカメラがゲートのうしろから各馬のダッシュの様子を映し、それから正面からの映像に切り替わるといった具合で、これでは実況放送のフォローにはなりません。また道中も、アップになったり横からのカメラになったりと、レースの流れだけを一貫して追い掛けているといったものではありませんでした。1000mを真っ直ぐ駆けてくる馬たちの表情はわかっても、とても馬順を確認できるものではないため、横から聞こえてくる実況の声も、段々と不明瞭になっていました。

第1週の土、日にあった3つの1000m戦を一応双眼鏡をのぞきしゃべってみましたが、ホップ、ステップ、ジャンプ、日曜の特別戦でなんとか格好をつけることはできました。

コツは、判然としないものは無理に見ようとしないことですね。スタートして2ハロン通過したころから馬順らしきものが出来るようで、それまでは、どの馬も手さぐりで走っているようです。それもその筈、ラップタイムを見ると2ハロン目から一気に速くなっており、差がつくのはこの辺から。ダッシュの1ハロンは12秒台、次から10秒台へとスピードアップ、優劣はこの辺りからついてくるのでした。アイビスサマーダッシュに向けて、準備は整いつつあります。実況のです。


長岡一也の岡目八目 第7回

不思議なレースがあるものです。どうしてこうも万人の予想をくつがえすのか。今年も函館記念の馬連は万馬券でした。これで5年連続です。

一度でもこの万馬券の恩恵を受けた者にとり、函館記念は、待ちに待った一戦。難解なハンデ重賞をどう攻略するか、知恵というよりトンチを駆使するレース。その日の勝負勘を懸命に呼び起こし、どう他人の気がつかない馬を探り出すかです。

馬券好きにとり、これほどギャンブルのダイゴ味を満喫できるものはありません。

去年の話で申し訳ないのですが、クラフトマンシップオースミタイカンという3万円は見事ゲットしました。小雨まじりで馬場が重いので、これならフレンチグローリー産駒52キロの軽量のクラフトマンシップと狙いを定めたのが正解で、たまたま同じく52キロのオースミタイカンが引っかかったのでした。

さて今年、この2頭がちゃんと出ているではありませんか。ちょっと評価の上がったクラフトマンシップは55キロ。私の考えではギリギリの斤量です。さあ、どうするか。

ずらり顔ぶれを見渡して、軽ハンデで魅力のあるのが先行するメジロロンザンの53キロ。内にいるダイワカーリアンが58キロを背負っているのなら、思い切ってハナに立ってほしい。でも、せり合って強い印象もなく、早目にみんなが動く小回りコースでは、いずれ何かにからまれて苦しくなるだろう。

函館記念は、一応前哨戦となる巴賞組がどう変わってくるかが、いつもポイント。となると何頭かにしぼれそうだと、ここまでは正解に向かってまっしぐらでした。

さて結果です。直前まで考えに考えて結論をと決めたまではよかったのですが、この日に限って中継が4時間ぶっ通し。マークシートに記入するひまもなく、あっという間にレースになってしまったのでした。残念無念、手も出さずに終わって心残りのまま。早く忘れましょう。


長岡一也の岡目八目 第8回

引き続き新しい新潟コースについて。長い直線の芝コースをよくよく見ると、白っぽく帯状の筋がグリーンとのコントラストを呈しています。これ、どうやって何のためにこうなっているのか、気になりました。

競馬場の馬場造園課の方に伺ったところ、1000m直線コースを真っ直ぐ走ることが出来るように考えられたことで、野芝の表の部分がグリーンで、白っぽくなっているところは葉の裏側を見せているのでした。ローラーのかけ方に工夫を凝らすことで、このような縞模様が生まれたのでしたが、全部が野芝のためにこれが可能になったのでしょう。

さて、その効果なんですが、今のところ長い直線を、ちょうど陸上のセパレートコースを走っているような具合で、大きく広がった状態で内から外から、なかなかの実況泣かせです。

当初は、内側と外側に馬がかたまって走るのではないかとも言われていましたが、どのレースも馬場いっぱいに広がって真っ直ぐ走ってくるので、これはフルゲートで馬がひしめき合っているからだと話し合っていました。ところが、この縞模様だったのでした。このコースに描かれた筋をたどるように走れば、どのレースも真っ直ぐ走れます。

この工夫、なかなかのものです。

さて、ほぼ真正面からこちらに向かって走ってくる馬の群の中で、今どれが先頭かを見極める方法はないものか。これにも、伝える人間の工夫、知恵を出さなければなりません。いつまでも横一線を叫んでいるわけにもいきませんから。これに関しては、レース実況の基本に立ち返ればいいと思っています。

レース実況の中には、脚色(あしいろ)を読むというのがあり、そのためには、走っている馬の脚元を見るのです。この脚元を見ることで得られるものに、どの馬が今出ているかがわかることがあります。これを応用して何度か練習すれば大丈夫、そう確信しているのですが。


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