長岡一也の岡目八目 第17回

疲労を表面に出さないので、春は調教も手控えずにやったら、高松宮記念では馬体がギリギリになってしまった。最初からマイルぐらいまではと考えていたので、安田記念にも出走させた。でもすっかり馬体が細くなってしまって。秋をめざして、その点を一番考えて調整をしてきたと、スプリンターズSを勝って春秋のG1スプリント戦を連覇したトロットスターの中野栄調教師は語っていました。直前の追い切りでいいタイムが出ていなかったため人気を下げていたが、1週前に一応の目途は立ったとみて、直前は疲労を考え手控え、あとはこの馬の底力を信じてのぞんだのでした。馬体重のプラス24キロ、これをどう読み取ったか、その一点に尽きるスプリンターズSだったのです。

馬の力をどう信じているか、これは競馬のベースになるもの。特にG1シリーズでは、大切にしなければなりませんね。

さて、テイエムオペラオーナリタトップロードステイゴールドがターフに戻ってきました。

年内で現役を切り上げるオペラオーにとっては、すでにつかんでいる王者としての立場を守っておかなければという、大きな重圧があります。G1・8勝、天皇賞4連覇、秋のG1・3戦2年連続完全制覇など、かつて見られなかった大記録を目前にしています。オペラオーの力を一番信じているのが、他ならぬパートナーの和田騎手です。その信念に寸分の狂いのないプレイを見せてくれることでしょう。そして追うナリタトップロード。春を早く切り上げた成果をと期待するところ大です。さらにはステイゴールド。年内でこれもターフを去るようです。ドバイでファンタスティックライトを下したあの感激は、ずっと記憶に残っていくでしょう。もう1頭、メイショウドトウも年内で引退します。テイエムオペラオーを頂点とした競馬にも、そろそろ変化がやってくることになります。


長岡一也の岡目八目 第18回

繰り上がりで京都大賞典の勝利をつかんだテイエムオペラオーは、これで重賞勝利数が12となり、スピードシンボリオグリキャップに並んでタイ記録となりました。このことは凄いのですが、後味の悪さは残ります。

こうなれば、オペラオーにもうひと踏ん張りしてもらい、はっきりと記録を更新してもらうしかありません。

それにしても、ステイゴールドは途中までは闘志を燃やして走っていただけに、惜しいことをしました。肝心なところでちょっと気をゆるめる悪い癖を、育ちの良さからくる淡泊な性格と見ていたのですが、ドバイでファンタスティックライトを差したことでなんだか馬が違ってきたみたいです。

このあとの天皇賞で、失格のうっぷん晴らしができるかどうか、こちらだって引き下がるわけにはいかないでしょう。ゴールまできっちり耳をしぼって走り抜く姿を、もう一度見てみたいものです。

ここで本当は、ナリタトップロードも加わってくるべきでした。

残り100メートルを切りゴールを目前にしての落馬、悲劇の主役になろうとは。勝たせたい、勝ちたいの騎手の思いは大切ですが、斜行がどんな結果を生むか、気を引き締めてかからなければならないことを、しっかりと認識しておくべきでしょう。いずれの立場であろうとも、馬にとってのチャンスは、そう多くは訪れないのです。その場を最大限に生かす騎乗こそ重要ですが、その前提には常にフェアプレイのスピリットがあってこそです。悔やまれることは、絶対にやるべきではないでしょう。

この結果を、喜んで受け入れた者があったのか、それを思うと、京都大賞典はただ残念と言うしかありませんでした。そのぶん、天皇賞の各馬の快走、健闘を祈ります。そしてジャパンCから有馬記念まで、スタンドを興奮させるシーンが続くことも。


長岡一也の岡目八目 第19回

今年の秋もテイエム勢の色が濃くなってきました。秋華賞のテイエムオーシャン、あれなら一気にエリザベス女王杯もとさえ思わせます。世代対決、これまで不利と言われてきた3歳馬、果たしてその壁を破れるかどうか。

強い先行馬がいれば、レースは絶対にくずれることはない、これはセオリーです。京都の内回り2000メートルというトリッキーなコースで、一番得をしたのはテイエムオーシャンでしょうが、それだけではないでしょう。

とにかく、強気なレースさえ出来れば、この世代の牝馬の中では一番だということを証明してくれました。

強い姿を見せつけられた次は、他陣営の新しい出方に注目が集まります。それが、競馬を面白くしてくれるのです。

レースの前までは3強という呼び方はされなかったのが、これからは3歳牝馬3強の命名で正解でしょう。エリザベス女王杯での世代対決、じっくり楽しみましょう。

この3歳牝馬は強いと言われ続けてきました。果たして、牝馬も牡馬と同列に考えられるのかいよいよ、その答えが出されます。

春はサバイバルの様相があまりにも顕著だった牡馬勢も、秋を迎え、どうやら落ちついてきました。

テイエムオペラオーメイショウドトウステイゴールド等々、年内でターフを去ることが決まっている現状、残るG1戦線で明日を担う勢力がはっきり見えてくるかどうか、そちらの方へと期待感はふくらみます。世代交代という決着がレースの上で見られることが何よりで、3歳馬には、勇猛果敢に戦ってほしいものです。

そして、武豊騎手の帰国。彼の参戦はまた新たな刺激になります。どこがどう違うのかをしっかり見極めるとき。手綱さばきでこうも馬が走るのかを見せつけてほしいものです。全てが新しくなる、みんなが望んでいることではないでしょうか。


長岡一也の岡目八目 第20回

菊花賞から秋の天皇賞へ。この異質の2つのレースから、この先の中央競馬、特に来年の古馬戦線を想定する時期を迎えました。
おそらくこの2レースに登場した馬たちの中から、今後のターフを支えるものが出てくる筈です。

京都の3000mと東京の2000mとでは、あまりにもレースは違います。ですが、そこから何かはつかめると思います。

スローペースの金縛りにあった菊花賞でしたから、大波乱の陰に泣いた有力馬たちの能力を疑うわけにはいきません。

調教の段階で、いつもよりイレ込み気味だったジャングルポケットは、本番では、一番気がかりだった局面に立たされ残念な結果でした。いつでも動ける立場にいながら、未知の距離と他陣営の動きが気になるあまりに遅れを取ったエアエミネム、また、やはり距離を意識するあまりに最後方から直線に勝負をかけたダンツフレーム、いずれも、思い切った能力全開の戦いではありませんでした。

ただ、マンハッタンカフェ1頭が、迷いを断ち切って早めのスパートを決めていたように見えました。

それもこれも、3000mという距離からきた結果であって、時折、菊花賞で見られるレースのアヤが為せることでした。

少なくとも、天皇賞組の3頭、テイエムオペラオーメイショウドトウステイゴールドは、年内でターフを去ります。有馬記念での最後の戦いがどうなるかの興味はふくらむ一方ですが、この先、これらの強豪たちに替わって何が頭角をあらわすか、こちらの方もおろそかにできません。

年内のG1戦、スプリント部門もマイラー部門も含めて、とにかく、がらり新しい勢力分布がこれから出来上がってくるのです。

それを思えば、きっちりバトンタッチが為されるような、それぞれのG1戦であってほしいと切望するばかりです。


長岡一也の岡目八目 第21回

アグネスデジタルクロフネ、秋の天皇賞出走枠をめぐり注目された2頭の外国産馬でしたが、片や天皇賞馬に輝き、片やダートのマイルに驚異的なタイムをマークし、ともにさらに視界を広げる結果を迎えたことは、何ともめでたいことでした。

アグネスデジタルが南部杯を勝ち、急きょ天皇賞に出走することで武蔵野Sに回らざるを得なくなったクロフネについて武豊騎手は、これでいいのですと語っていました。単に騎乗が重なるということでなく、初ダートでも自信があったのでしょう。それに、結果如何では、世界を舞台にという展望も開けます。

この1年、欧米を主戦場にしてきた武騎手にとり、芝もダートも区別なく果敢にチャレンジする世界の強豪たちを見るにつけ、日本調教馬で同様にステージに立ちたいという思いはあるでしょう。

初ダートで快走したクロフネは、ドバイワールドC、北米のブリーダーズCといった世界の最高峰をめざすことも可能かもしれません。次走の楽しみを与えてくれました。

また、アグネスデジタルの四位騎手には、香港の国際レースという桧舞台が待っています。初の芝2000m、しかも道悪という未知の領域でどれだけやれるか、確信のないままのレースでした。これだけ走るとは、馬を信用していなくて申し訳なかったと、レース後語っていました。

誰しもが予想できなかった局面でしたから、ただ、アグネスデジタルの精神力をほめ、新しいタイプのチャンピオン誕生を祝福する一番だったということでしょう。

国際舞台へという流れは、競馬にあっても当然、多くが望むところです。可能性を追い求める姿勢こそ、この場合大切です。外国産馬という区切り方が、どれだけ時勢から離れているか、うすうすみんなが感じたのではないでしょうか。新しい時代に入っていくような気がしてなりません。


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