長岡一也の岡目八目 第22回

トウカイオーザアドマイヤボス。ダービー馬を兄に持つ2頭は、早くからG1の舞台での晴れ姿を期待されてきました。

ともに4歳の秋、10月13日の京都、準オープンで顔が合って1着と2着。そして、先日のアルゼンチン共和国杯はG2戦、ここを勝って次は有馬記念をという対戦でした。

勝ったトウカイオーザは、平成3年のダービー馬トウカイテイオーの9歳下の弟。重賞は4戦目での初勝利ですが、兄と同じく東京競馬場はいいですね。
この馬の走法は、この広い、直線の長いコースが最適です。ちょっとズブいところが見られ、ゆるみないペースに置かれそうな感じ。4角では後方から2番手で、とても無理と思いはじめた直後、馬場の中央に出してからが独壇場、圧倒的なパワーで駆け抜けていました。これで2連勝、どうやら軌道に乗ったようです。

間違いなく、存在を見せつけたトウカイオーザの今後は楽しみで、古馬戦線注目の1頭に決めます。特に、東京では。速い、ゆるみないペース向きですね。

一方のアドマイヤボス。母ベガの初仔の兄がダービー馬になったことで、1歳年下の全弟としては期待されて当たり前。3戦目でセントライト記念を勝った昨秋は、胸さわぎを覚えたものでした。

アルゼンチン共和国杯は去年も出走していて、内にささる走りで十分に追えずに大敗でしたが、今年も、やはり同じような直線の走り方でした。一番先にスパートし意欲的に見えたのですが。どうも左回りはムズカシイようです。それでも、昨年の有馬記念では、ゴール前、上位の一群の中に切り込んでいました。右回りなら大丈夫なはず。いつまでも負けてはいられない馬です。

偉大な兄を持った弟たちの悩み。なかなか思いどおりにはなりませんが、それなりの理解を持って、ゆっくりいい所を見続けてあげたいものです。


長岡一也の岡目八目 第23回

レースの見所のひとつに、会心の好騎乗があります。エリザベス女王杯で見せた武豊騎手のプレイは、その中でもインパクトの強いものでした。

4番人気が示すとおり、トゥザヴィクトリーの評価は、勢いに乗る3歳馬3頭に一歩ゆずると見るのが妥当と多くの者が考えていました。本人も、終いが甘くなる弱点を知っているからこそ、それをどうさばくか、秘かに策を練ったことでしょう。

とにかく、サンデーサイレンス産駒を扱わせたら、彼の右に出るものはありません。あのプレイは、恐らくほとんどの者が予測できなかったことで、それをやってのけたところに、騎手としての存在感があります。

武豊騎手はデビューから15年目、その大半が騎手の頂点にあり続けています。ここで改めて、彼の原点について思い起こしてみました。

名人と呼ばれた父・邦彦さんは、彼がデビューして2、3年目の頃、その活躍ぶりを見てこう述べていました。今は若いからといって許されていることも、25歳位になってからはそうはいかなくなるでしょう。その時期が正念場ですと。

それに対し豊くんは、なんとか研究してゴール前、馬をもっと追えるようにしたいと語っていました。

そしてその年齢になった頃、見事、彼のプレイにはぐっと迫力が加わり、騎乗スタイルにも変化を見せていたように思えました。低い姿勢で馬の推進力を引き出し、先頭に立ったところがゴールというシーンを度々見るにつけ、単なる天才ではなく、デビューの頃から続けてきた努力の成果と思うのです。

自信のある騎乗のときは前半は絶対に無理をせず、最大限にロスを少なく、相手関係で劣る馬の場合は、先行するか、どこかで早目のスパートをしてみせる等、自在なプレイでこれからも楽しませてくれるでしょう。


長岡一也の岡目八目 第24回

新しいチャンピオン像を意識させられる今日この頃です。

秋の天皇賞を勝ち、芝とダート両方のG1馬となったアグネスデジタル。エリザベス女王杯を勝ったトゥザヴィクトリーは、ドバイWCで米国の強豪キャプテンスティーヴを脅かした女王。つまりは、芝でもダートでも等しく走れる存在こそチャンピオンという姿が日本でも見られる時代に入ったということです。

ブリーダーズCのダート戦に出走するため欧州から米国に遠征するケースは度々あり、芝が主流の欧州馬でもやればやれるのかという思いはありました。しかし、目に見えて、芝しか経験のない馬がダートに出るようになったのは、最近のこと。1996年に創設されたドバイWCが、ナドアルシバのダート2000m。これとそのサポートレースに出走する欧州馬の存在は少しずつ、目につくようになってきました。

第2回のジャパンCダートに出走するフランスのキングオブタラ、ドイツのアエスクラップの2頭は、ダートは未経験です。日本まで遠征してきて、しかも初体験のダート戦に挑戦するのです。

こうした姿は、今後多く見られるようになるかもしれません。

因みに、キングオブタラのドゥーメン調教師は、去年の中山グランドジャンプにボカボカを連れてきて2着しています。

一方のアエスクラップの父はアカテナンゴ。ジャパンCでドイツに初の栄冠をもたらせたランドと同じ父親です。

何等かの手掛かりがあるからこそ来日したのでしょうし、ダート初挑戦を敢行するのでしょう。レースの選択肢を広げることで、可能性を追求する姿がそこに見えています。

こうした世界の競馬事情を背景に、ジャパンCダートを走る芝のG1馬クロフネへの注目の度合は強くなるばかりです。結果如何では、世界が見えてくるからです。


長岡一也の岡目八目 第25回

ジャパンCウィークは、土曜日が武豊騎手で日曜日がオリビエ・ペリエ騎手。終わってみれば騎手の存在を印象づける結果でした。

なんにもやっていませんとクロフネ、2頭のチャンピオンがいて、たまたま今回はこっちが勝ったというジャングルポケット。この2頭とも海外を視野に入れているというところに、大きな収穫がありました。

欧米の記者も、日本馬のレベルの高さを認め、今度は、こちらから出掛けて行く番でしょう。

それにしても、日本の競馬を知り尽くしているペリエ騎手の自信には舌を巻きました。

ジャパンCは日本馬初の4連勝となりましたが、今回は、日本馬に外国の騎手が騎乗した点に、時代の流れを感じます。短期免許という制度の下、度々来日する騎手の顔ぶれを見ると、その中には、すっかり日本のコースを手の内に入れている者が多く見受けられます。

ジャングルポケットのペリエ騎手はその最たるもので、ジャパンCの3角を回ったところでいったん馬を下げていました。このことについて、東京競馬場の4角は、多くの馬が外に回っていくので、一緒に行ったのでは大きく振り回されてしまう。そこで下げて馬群の中につけ、直線、前が空いたところで外に立て直して追い込んだというのでした。

また、ここを熟知している武豊騎手をマークしていればいいとも語っています。ステイゴールドが仕掛けた直線、そのすぐ外にジャングルポケットは姿を見せていました。テイエムオペラオーをまず追い掛けたステイゴールド。さらにその動きを見据えていたジャングルポケット。馬の力もさることながら、勝負のポイントをつかんだ騎乗が、ジャングルポケットの勝利に大きく力となったのは間違いないところでした。

大レースに光る騎手のプレイ、競馬の魅力はそこにもあります。


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