長岡一也の岡目八目 第38回

弥生賞を勝てば、その春の皐月賞、ダービー戦線の最有力馬と呼ばれます。今年は、バランスオブゲーム。このフサイチコンコルド産駒があらゆる検討の場面で俎上に載せられることになります。今からこの馬についてよく知っておく必要があるでしょう。

心に思い浮かぶことと言えば、新潟2歳Sの直線で見せた素晴らしい反応、あっという間に抜け出した瞬発力でしょう。朝日杯FSでもその面が注目されましたが、結果4着。ソエで坂路中心のけいこしか出来なかったことで不本意な状態だったと言われました。

その点、弥生賞は、調整の中身がちがっていて、暮れに先着を許したヤマノブリザードとの0秒2差は、さして気になるものでもなかったとも考えられます。

それからもう一点、バランスオブゲームの気性、テンションの上がりやすい点がどう解消されていくかということが気になります。

ひょうきんな田中勝春騎手は、うまくスローペースに持ち込んで逃げ切ったように見えたことについて、走っている最中でも盛んに物見をしていた、内馬場にいたカラスに気を取られることがあり、それに助けられたと言っていました。ちゃんと走っているようでも、いつ、カーッとくるかわからないし、馬とケンカしても絶対に負けるしとも、彼らしい言い方で素直に語ってもくれました。

弥生賞で勝てたことは大きな収穫でしたが、願わくば、前に馬をおいてレースが出来ていればもっと自信が持てたということでしょう。ただ、中山向きの調整を積んできたからという宗像調教師の胸の内には、次に打つ手があるのではないかという思いもあります。

とにかく超スローペースであった弥生賞の結果が、同じコースで行われる皐月賞にどんな形で影響を及ぼすことになるのか、最大の焦点です。別の先行馬の存在、これを待ち望むものが今年は特に多いように思えてなりません。


長岡一也の岡目八目 第39回

3つのトライアルを終えた桜花賞戦線は、ほぼ出走馬の顔ぶれが見えてきました。

断然、他を圧するものがいない、どうやら当日まで迷いそうです。混戦、混とん、どんな呼び方がふさわしいか考えています。

最近は、クラシック戦線の様相に合わせたそのレースのニックネームをつけることが少なくなりました。桜花賞やオークスのような牝馬クラシックにはつけにくくとも、皐月賞やダービーなら、なんとかなりそうです。レースを楽しく盛り上げるため、効果ある呼び方、そろそろあってもいいのではないでしょうか。

このあいだ乗ったタクシーの運転手さんが古い競馬ファンで、こんなことを述べていました。戦国ダービーなんて呼んだことがあったが、あの頃は楽しかったね。どれが東の大将でどれが西の大将と決め、次にのる騎手の品定めを一緒にする。どいつならきっと走ってくれるだろうなんてねと。

確かに、以前は騎手にもニックネームのつく人がいました。

闘将加賀武見、剛腕郷原洋行なんかすっかりおなじみでしたし、ターフの魔術師武邦彦なんて、なかなかのものでした。武豊騎手がスイ星の如く登場した頃は、彼のことを天才ともてはやしたのですが、これについて当人は少し腰が引けていたようでした。

いずれにせよ、多くのファンが受け入れやすい、興趣を呼び起こすニックネームの創造というのもいいのではないかと思います。

言葉が少なくなった昨今ですが、言葉の持つ力について、もう一度見直すときではないでしょうか。

伝える側に知恵がないならば、一般のファンの皆さんの知恵に頼るのも一案ではないかと思います。

桜花賞、オークス戦線、皐月賞、ダービー戦線をどう表現するか、ここから勝ち馬が見えてくることもあるかもしれません。


長岡一也の岡目八目 第40回

年長馬の逆襲が続く中で行われる高松宮記念。アドマイヤコジーンもその1頭です。今年に入って東京新聞杯で勝ったのが、朝日杯で2歳チャンピオンに輝いて以来3年ぶりの勝利でした。このコジーンの翌年、エイシンプレストンが朝日杯を勝っていますが、このプレストンも次の勝利までには1年半もかかっています。

ともに骨折による頓挫を来たして、栄光を背負っての復活への長い道程を経てきたのでした。このうち、エイシンプレストンは国際G1香港マイルを勝利するまでに鮮やかな復活ぶりをみせ、今は国内のG1タイトル獲得への期待がかかっています。

一方のアドマイヤコジーンは、前哨戦の阪急杯を勝ち、いよいよ高松宮記念でスプリントチャンピオンをめざします。速いタイムへの不安があったところ、前走では速いペースの先行馬の中にあり、ただ1頭踏ん張ってみせました。しかも好タイムでの勝利、好調の持続するタイプに見えるので、一気に3連勝で頂点に立つことも考えられます。

同じ6歳馬トロットスターは、去年のスプリントG1連勝馬、勝てて当然の立場にあります。2頭とも年長馬であっても、今度戦う意味は異なります。

阪神大賞典でも、6歳馬ナリタトップロードが勝って、4歳馬で昨年の年度代表馬ジャングルポケットを迎え撃ちました。

古馬G1戦線の前哨戦の段階では、強力世代と呼ばれてきた4歳馬たちが、年長馬の逆襲にあうというシーンばかりでした。春の天皇賞に向けては、去年の2冠馬マンハッタンカフェが日経賞に登場し、こうした流れに立ち向かいます。果たしてどうなるものか。

春のG1の先陣を切る高松宮記念には、4歳の代表としてショウナンカンプが初めてG1の舞台に登場する予定です。一気のスピードでどう立ち向かっていくか、強い世代を改めて証明する馬になれるかどうか、注目の1頭でしょう。


長岡一也の岡目八目 第41回

高松宮記念は、スプリント界の新星ショウナンカンプが勝ちました。旧勢力を尻目に一気の逃げ切り、世代交代を強烈にアピールしました。短距離戦でありながら、逃げ一手では通用しなかったこのG1戦に、初めて登場した韋駄天チャンピオン、何か新しい時代を感じさせます。

オーナーの国本哲秀さんは旧知の友人、何事にも熱中される方で、20年以上も前になりますが、馬を持つのが競馬の最高のダイゴ味といった話をさせてもらったところ、早速馬主さんになられた経緯があり、以後、その勉強のされ方といったら、並大抵ではありませんでした。

初めは、なんとか愛馬を勝たせて口取り写真をと願っていましたが、なかなかその機会は訪れませんでした。

私どもテレビスタッフが、その初勝利の感動を取材したいとカメラで国本さんを追いかけたことがありました。が、そう簡単なものではありません。とうとう、その瞬間をキャッチすることは出来ませんでした。

それから間もなく待望の馬主初勝利が訪れ、ショウナングレイスという牝馬がその幸運の女神です。つまり、ショウナンカンプの母です。

馬主歴17年目、重賞レースに出走させることを目標に、これまで何回かは走らせてきましたが、その初勝利がG1の舞台で達成されたというのも珍しいことです。

たまたまその日の中山1レースで、半弟のショウナンダッシュが初勝利をあげていて、中山から中京へと2場で口取り写真におさまったのでした。これも滅多にあることではありません。

初勝利を国本さんにプレゼントしたショウナングレイス、そして、その母は、初のG1馬をもプレゼントしたことになりました。幸運はこんなかたちで訪れることもあるのです。


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