長岡一也の岡目八目 第42回

史上まれにみる大混戦、戦国桜花賞だからといって、必ずしも大波乱を呼ぶとはかぎりません。大混戦、つまり中心馬がいろいろに考えられて定めにくいということで、適中の難度が高く、その見返りの配当は人気が分散されるだけに、びっくりするようなことはないということです。

クイーンC、チューリップ賞、アネモネステークス、フィリーズレビュー、そしてフラワーCと前哨戦があり、そのすべての勝ち馬が異なりました。ただ、その中で言えることは騎手だけは別だということです。この5レースのうち3レースで勝利している岡部騎手が、相手を知るという点では大きくリードしていると言っても過言ではありません。そのうち、クイーンCが普通のペース、アネモネSがハイペース、そしてフラワーCがスローでした。それぞれで勝利した馬の中で選んだのがシャイニンルビーです。こんなに大人しいサンデーサイレンスはいないと絶賛していました。ただひとつ残されたクラシックの栄冠を、今度こそはと、期待がかかります。スピードがあり、レースセンスの良さを引き出す岡部騎手の信頼の手綱は、どんな展開にも対応できるでしょう。このシャイニンルビーのクイーンCで2着したオースミバーディーは、坂井騎手によると、仕掛けるにせよ控えるにせよ意志のとおりに走ってくれる馬ということです。気になります。

デムーロ騎手が騎乗するチューリップ賞を勝ったヘルスウォール、この馬については、ずっと同じペースで走れる馬という印象を彼は持っています。その実感を大切に先行したのが前走でした。

レースが平均ペースなら上記の3頭が自在に立ちまわれるので有利、もし、少しでもペースが速くなると、チューリップ賞2着馬オースミコスモが戦いやすくなります。前走は少しかかり気味でしたから。無理矢理回答を出してみました。


長岡一也の岡目八目 第43回

古い競馬ファンなら、同一きゅう舎の2頭出しは人気薄を狙えという格言らしきものを知っています。よくこの手で馬券を楽しんでいる筈ですが、まさかクラシックレースでこうは考えたくないというのが本音で、見事、桜花賞は空振りに終わりました。

サクセスビューティアローキャリーの2頭出しの山内調教師でさえ、レース中ずっと見ていたのは3番人気のサクセスビューティの方で、直線抜け出してくる姿を見て初めてアローキャリーに気がついたというくらいですから、その勝利は、やはり意外であったということです。考えがそこまで及ばなくともそれは仕方がないことと納得するしかありません。

競馬の勝ち負けは、このように人の思惑を弄ぶもので、勝利の女神の心をつかむのはむずかしいものです。

こういうことを繰り返していると、レースの予想というのは何なのだろうと思いたくなります。

G1競走になると、その検討も緻密になって、過去のレース分析からひとつの理論を打ち立てなかなかの説得力を持ちます。その考える過程が、実は楽しみであって、それがそのまま結果に結びつくとは、多くの者が考えていません。それなのに、他の人の予想を聞いてみたくなるのです。

競馬検討の、不確かで曖昧ながらも、やはりそれをよりどころにするという、なんとも不思議な存在を今また思い知らされます。

レースは生きものである、もうひとつのこの言葉を思い出します。何があるかわからない、様々な可能性に思いを馳せ、その中から何をチョイスするかなんですが、それは思いつきみたいなものです。どう考えても、普通の考え方では、今年の桜花賞のようなレースはつかめません。

そこで皐月賞、今度は、女神がどういう気分で勝敗を操ることになるのでしょうか。


長岡一也の岡目八目 第44回

桜花賞と皐月賞、2つのクラシックレースになにがしかの共通点はと、そこに注目していたところ、いずれも2着に小島太きゅう舎が食い込むという結果でした。

こうした根拠のまるでない考え方でも通用するのが、競馬の面白いところです。

もう一点つけ加えれば、シャイニンルビータニノギムレットという本命馬が、ともに際どいところで3着に敗れるという共通項も見つけられました。この2頭に絶大な声援を送ったのですから、まず第1ラウンドは悔しい思いばかりで終わってしまいました。

勝つのに理由なんていらない、勝った馬が強いのだ、要するに、勝つ馬を見つけられなかっただけではないか、そこに行きつくのでした。つくづく、レースは生きものを思い知らされ、その生きものの正体をどうつかむか、全体像をイメージしないことには、次もまた失敗するぞと、意を新たにオークス、ダービーに立ち向かうことにしました。

桜花賞を検証すると、生きものとしての要素であるペースが、前後半の半マイル46秒9と47秒4、また皐月賞の前後半の1000mが59秒2と59秒3、いずれも平均ペースでした、ただこれをそう言うのではなく、緩みないペースと言い換えると、もう少し様子がはっきりしてきます。

今のクラシックレースは、こういう流れに適応できない馬では勝てないことが多く、騎手にしても、それを意識してレースをしなければ駄目だということです。13番人気のアローキャリーは3番手でためを効かせ、15番人気のノーリーズンはコースロスのない内々で折り合いに専念と、それぞれ無欲のプレイという勝因が見つけられます。本命馬の周囲にはマークする有力馬がいて、2着にも伏兵が飛び込むチャンスがそこから生まれます。波乱はこうして生じるのですから、本番がどうなるかを想定することの重要性ばかりが頭に残る2つのクラシックレースでした。


長岡一也の岡目八目 第45回

人三馬七、以前よく言われた言葉です。人馬のレースに及ぼす力の割合は、馬の力が七分で騎手の腕が三分と、こう言い表してきたのです。それでも、大レースになれば、この比率も五分五分に近づくと見ていました。

今は、多くの有力騎手がフリーの時代で、昔とは事情が変わっています。所属するきゅう舎の馬に優先して騎乗するということもあっても、逆に、騎手の方が騎乗馬を選択するというケースも出てきました。また、限られたごく少数の騎手に騎乗依頼が集中したり、その騎手の事情によって走るレースを決めたりするところまできています。

復帰した武豊騎手をめぐるレース選択のニュースを知るにつけ、人三馬七の時代は遠い昔の過去になったことを実感します。

馬のレベルがずっと高くなり、それだけ力の差も接近している時代だけに、騎手選びも激しくなりました。誰がどの馬に騎乗するかが話題の中心になり、レースだって、その影響を受けているかもしれません。

騎乗技術にもそれぞれ特徴があって、その技術と技術のぶつかり合いから、レースの流れを予知することも出来るでしょうし、もっとつきつめて、その心理状態を考えることも大切な要素と思うようにしています。どれだけその馬のことを知っているか、それによってどれだけ自信を持っているか。ベストの騎乗が出来るかどうかは、その点にかかっていると言えるでしょう。

力の差がごくわずかとなれば、騎乗者の判断、さらには気迫までレースの行方を左右する要素になりそうです。なんとかしようという強い思い、その微妙な差が勝負を決定づけているシーン、いくらでも思い出すことが出来るでしょう。スペシャルウィークでダービーを勝った武豊騎手は、これでダービーの勝ち方が分かったと述べています。これに類する感覚をつかんでいる騎手と騎乗馬、または気力充実の騎手を徹底マークしなければ。

長岡一也の岡目八目 第46回

出走したG1、3戦全てに勝利したマンハッタンカフェは、今後、G1ハンターの異名に一層光を増していくことでしょう。ステイヤーとしては現役最強馬、さらに、ひと回りもふた回りも強さに厚味が加わり、末脚の爆発力がどこまでスケールアップするか楽しみです。

淀の長距離戦では菊花賞に続いて行く手を阻まれたジャングルポケット。左回り、東京競馬場、クラシックディスタンスでは最右翼の立場にあるこの馬の戦いの場は、国内では秋。そこでの対決シーンが見られるかどうか。戦い方の型を持っている両馬は、古馬としての風格を増し、今年の競馬を引っ張っていくことになりそうです。


微妙にタイプの異なる両雄の、その特徴をつかんでおくと、それだけ競馬が面白くなります。

一方のナリタトップロード。春の天皇賞は3年連続3着、これが精一杯なのか。父・サッカーボーイがあのステイゴールドの母ゴールデンサッシュの全兄、ナリタトップロードステイゴールド的なものを感じ出しても不思議ではありません。晩成の血、なればまだまだと、元気で走り続けてほしいものです。

3200mでの3強対決は終わりました。次なるステージがどこになるのか。見応えのあったシーンの余韻に浸りながらも、気は早くもそこに行っています。と同時に、次は、それぞれ違った戦いにチャレンジしてほしいものです。距離によっては、これまでとは異なるペースも考えられ、そこでどう戦うか楽しみです。

海外遠征、それも英国G1のキングジョージというのも魅力です。是非成果を上げ、力を世界に認知させ、再び、目のあたりにできる国内での対戦シーンを見たいもの。マンハッタンカフェジャングルポケット、そして古豪ナリタトップロード。これに加わる新しい世代も出てくるでしょう。

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