長岡一也の岡目八目 第68回

秋競馬に入っているとは言え、やはり中山が始まれば一段と新たな気分になれます。
 
新潟のスプリンターズSにビリーヴが勝って、目立つ牝馬を印象づけました。これで、ファインモーション、テイエムオーシャンが出てくるのですから、牝馬は元気です。むしろ、真打ちはこれから登場するので、G1の舞台で牡牝がしのぎを削るシーンが、何回か見られるでしょう。
 
それにしても、ビリーヴの勝利は見事でした。全8勝が1200mというスプリントのスペシャリスト。加えて、武豊騎手の狙いすました騎乗、久々に、心を動かされました。
 
本人は、本番を前に、どう戦うかをきっちり決めていたのでしょうか。いくら末脚が切れると言っても、あまり離されていては外を回って追い上げても届かないだろうからと言っていたようでした。ショウナンカンプの前半3ハロンのラップは33秒7、これは、高松宮記念の32 秒9より遅く、この馬自体、直線に入っても楽であった筈です。ところが、追うアドマイヤコジーンも離されずについて行けるペースで、これはショウナンにとって逆につつかれてしまう結果になりました。
 
一方、ビリーヴは、前走のセントウルSでレコード勝ちしたときとほぼ同じラップ。折り合いに成長の伺える同馬にとり、これまた十二分に力を出せる流れでした。武豊騎手も「馬がしっかり走ってくれたので、馬をほめてやって下さい」と語っていて、自分は何もしなかったと述べていました。
 
ボコボコ馬場の内に入れて叩き出した力の勝利でしたが、ショウナンカンプがもっと素軽く走れていたら、どうなったか判断しかねるところもあったでしょう。この3着は、それなりの理由があったと思っています。2着アドマイヤコジーンは、1200mでの決め手の差で敗れたのですが、この馬は、元々マイル戦の方が合っているので、マイルCSに向け、視界は良好と言うべきでしょう。


長岡一也の岡目八目 第69回

マンハッタンカフェの不運、これを、世界の越えられない壁とは結びつけたくはありません。様々な国際G1で存在をアピールしている日本馬のレベルが、昔と違うことは、誰もが認めているところです。
 
マンハッタンカフェが凱旋門賞でどこまでやってくれるか。エルコンドルパサーの惜敗を思い起こさせ、その延長線上に今回の挑戦があると考えれば、当然、今度は前回を上回るものをと期待しても不思議ではありませんでした。
 
大敗の原因がはっきりするにつけ、無念の思いは大きくなるばかりです。あれほど好調を伝えられたのに、あれは一体なんだったのか。競馬の不運は、そういうところにこそ潜んでいると、またまた見せつけられてしまいました。そして、デットーリ騎手の勝利。そこには、ヨーロッパの伝統の力を見る思いがします。単に馬が強いということではないもの、そこに伝統の力が備わってこそ、凱旋門賞の勝利が見えてくる、そういうことではないかということです。
 
例えば、日本のジャパンカップ。日本の競馬に根づいた今、ここで外国馬が勝利することはそんなに簡単ではなくなりました。国内でジャパンカップを狙うという伝統の力が、芽吹いたからこそ、その牙城はなかなかくずれない、競馬とはそういうものという姿が見えてはきませんか。
 
欧州の凱旋門賞は、欧州を根城とする馬が、アメリカのブリーダーズカップは、北米を中心に走っている馬、そして、ジャパンカップは日本馬がという具合で、そのレースに伝統が加われば加わるほど、そういうものではないかと思わされます。
 
そして、それぞれには壁があり、それをのり越えることがどんなに大変なものであるか。だからこそ、チャレンジするためのエネルギーが途方もなく求められているのであり、地域差は、今はそんなにないと断言したい。


長岡一也の岡目八目 第70回

底知れぬファインモーションの強さ、これでひとまず、競馬に大輪の花が咲きました。
 
これと、テイエムオーシャン、牝馬2頭のレースに期待が持てます。相次いだ強豪の引退をどう埋めていくか、少しずつ、希望の抱ける馬の出現を心待ちしていきたいものです。菊花賞は、ダービーの1〜3着が出走しない厄介なレースになりました。
 
スタミナ自慢、確たるステイヤーの出にくい今の競馬にあって、菊花賞3000mへの対処の仕方に微妙な変化を感じざるを得なくなりました。これは、騎乗者の心理に少なからず影響を与えています。
 
極端なスローペースで上がりだけの競馬という考え方が普通ですが、京都の直線は平坦なため、馬のタイプによっては、必ずしもそれだけではなくなります。道中、早い時点でペースを上げていっても、それほど直線で脚勢がおとろえることもありません。3000mを3分割して、最初の1000mは、ある程度いいポジションを占めるために全体にペースが上がり、中の1000mは、スタミナの消耗を考えてじっと動かずゆったりと構えて、最後の1000mでどれだけ速い脚を使えるかというのがだいたいの戦い方。これだと、3000m戦であっても、2200〜2400mぐらいを走るのに等しく、平均ペースに乗って決めて勝負という姿が見えてきます。中の1000mが遅くならない場合には、完全なステイヤー型が台頭するのですが、今年のメンバーだと、そういう展開は見えにくいものがあります。岡部騎手のローエングリンがカギを握っていて、それほどペースを落とさず、後続に脚を使わせながら流れ込みを狙いそうで、3分割したそれぞれの1000mを、それほど落差のないラップを踏みそうです。多少のスタミナはもとめられ、あまり後方からの追い込みは効きにくいという形が考えられ、長くいい脚を使えるタイプ、そういう馬を圏内にしぼっていく、そういうことになると考えているのですが。


長岡一也の岡目八目 第71回

何があるか分からないとは言っても、ノーリーズンのスタート直後の落馬は、あまりにもでした。馬がゲートをとび出すときには、からだが15センチは沈むと言われています。
 
以前、競走馬の走るメカニズムを解明した記録映画のナレーションをやったことがありました。普段、双眼鏡でレースを見ているだけでは知る由もない馬の四肢の動き、首や肩先の波打つ筋肉の動きなど、超スローモーションで見せていて、どれほど脚への負荷があるか、その凄さに息を呑む思いでした。
 
ゲートからとび出すとき、馬はからだを沈め、とび上がるようにして前へ進みます。後脚の蹴りで馬体を推進させ、そのとき、前脚は真っ直ぐ前へ伸ばしています。このフォームですから、背中の騎乗者には、その動きに合ったバランス感覚がもとめられるのです。
 
なに気なく見ているスタートの一瞬ですが、そこには細心の注意が払われていて、それ如何では、勝負への影響も避けられません。
 
ですから、レースの実況放送も、そのスタートの一瞬に神経を集中させるのです。ここをクリアーすることで、人馬のリズムが生まれ、その馬の全能力を出し尽くすことができるのです。
 
ところが、馬はとてもナーヴァスな生き物で、例えば、その瞬間に何かを見てしまうとか、突然の大きな声に身をすくめてしまうとかすることがあります。
 
今度の場合、ノーリーズンに何かがあったのでしょう。通常以上に大きくとび上がり、その為、着地の衝撃が大きかった、武豊騎手がバランスをくずしてしまったのは、そのせいだったようです。
 
これは、不可抗力だったとしか言いようがなく、ただ、残念無念の思いを時間をかけて吹き切るしかありません。好事魔多し、これを乗り越えるのが競馬とつき合っているものの定めなのでしょう。それにしてもの、今年の菊花賞でした。気を取り直しましょう。


長岡一也の岡目八目 第72回

シンボリクリスエスがジャパンCに向かうそうです。面白いことになりました。天皇賞での岡部騎手、いい笑顔でした。これで胸を張っていられると、確信を深めたところで、中央競馬の希望の星は、今後、世代交代を主張していくことになりました。
 
古馬の壁をクリアーする準備として入念な稽古を積み、それでもへこたれずにプラス体重を示していたことに、岡部騎手は喜んでいました。中山の速いタイムにも対応できたこと、何よりも折り合いに不安がなく、ゴーサインにいつもいい反応を示すところにこの馬の良さ、強さがあります。同じ中山なら、ジャパンCも似たようなレースになるでしょうから、G1・2勝目も手の届くところにあるように思えます。
 
戻ってくるジャングルポケット、海外の馬よりも日本馬同士の対決、今年もそんな期待がふくらみます。
 
長距離戦ばかり走ってきて、中山の2000メートルでどうかとささやかれたナリタトップロードの2着にも、光明が見えました。
 
テンに速い脚がない分、位置取りが悪かった天皇賞でした。最内枠から大外を回って追い込むという苦しさがありながら、急坂を上がってからの伸びはさすが。距離が長くなるジャパンCでトップロードが願うのは、前半のペースが少しでも遅くなることでしょう。この大きな走法で確実に伸びてこられると言っても、ある程度、前の位置でなければ、この中山の回りで勝つことはできません。
 
菊花賞を勝ってから、出走したG1戦はこれで9連敗となりましたが、今年は5戦3勝で天皇賞は、春が3着、秋が2着と好調です。サッカーボーイの成長力、持続力は相当なもの。ナリタトップロード6歳の終盤、感動の瞬間を願う思いも大きくなっています。
 
新旧対決というクライマックスに向かって、これにノーリーズンのリターンマッチという要素が加わり、面白くなりました。


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