スタッフの四方山話 第9話
文・成澤慎一

専門学校を卒業してから、この仕事に就いて8年。中学の時に偶然テレビで見た競馬。以来10年以上見続けて今日に至っています。競馬を始めてから1年が経つのがとても早く感じ、サクラチヨノオーからジャングルポケットまで見たダービーの記憶、出来事はあっという間の感じがします。そして私を熱くさせた馬たちとの出会い・・・これも数えきれないほどいる、と言っても過言ではありません。

平成3年の秋、私にとって忘れられない1頭の馬の引退式が東京競馬場で行われました。クラシックでも善戦しながら無冠で終わり、有馬記念でも2着。勝てなくても、ファンの期待を裏切っても、なぜか人を惹き付ける魅力。私が競馬を見はじめてから1番最初に熱くさせてくれた馬、そう、メジロライアンの引退式です。
その日は、開門と同時にウイナーズサークルの最前列に陣取るつもりでいましたが、なんと見事に寝坊をしてしまい、その様子は後の方からわずかに見える程度・・・。写真もほとんど撮れずに終わり、もの凄くショックな一日だったことを覚えています。

私がなぜライアンを好きになったのか?
その頃はまだ競馬場に行ったことがなく、生で馬もレースも見たことがありませんでした。ライアンを初めて見たのは初勝利を挙げた未勝利戦、もちろんテレビの競馬中継で、でした。その時、直感的にこの馬はきっと凄い馬になると感じました。それからずっと追いかけ馬券を買い続けましたが、嬉しかったことよりも悔しい思い出のほうが多かったです。ライアンは成績としては記録に残るような馬ではありません。ではなぜ、私のように熱くなった人々が大勢いたのでしょうか?

それは、いいレースをしても勝ちきれない勝負弱さ、歯がゆさなどが応援したくなる要因なのかなと?

この手の馬たちは、ライアン以降も出てきました。今でいうとステイゴールドでしょうか。少し前ではナイスネイチャなんて馬もいました。中でも私の一番のお気に入りはロイスアンドロイス。彼はダービートライアルの青葉賞に未勝利ながら出走し、惜しくも4着でした。(未勝利馬は1着にならないとダービー出走は無理だったのですが・・・)以後も2・3着を繰り返しながら、なんとかオープンにまで登りつめていきました。
そして私にとって思い出の5歳秋。天皇賞は大健闘ながらもネーハイシーザーの3着と定位置に収まり(ちなみに私はロイスネーハイシーザーで馬券勝負!とほほ・・・)続いて迎えたジャパンカップ。私なりに検討した結果、個人的な感情を抜きにしても、本命はロイスアンドロイス。当時の自分にとっては無謀ともいえる単勝3万円を買いました。
レースはスタートからロイスばかり見ていました。折り合いもつき、位置どりもいい。ああ、いい感じできているなぁと思っていました。直線に入り、坂を上がったあたりからピンク帽子のロイスが抜け出してきて、これはいけると思いました。でも、あと100mくらいからパラダイスクリークマーベラスサンデーに差され、やっぱりいつもの3着でした。やったと思っただけにショックは大きく、情けないなぁーなどと思いましたが、時間が経つにつれて悔しいというよりも、納得のできる3着だったので後悔はありませんでした。むしろ馬券を買ったことによりロイスに対する愛着がさらに増した思いがします。

その後も自分がこの馬は走ると思った馬や直感などを感じた馬の馬券は、できるだけ買うようにしています。メジロライアンロイスアンドロイスなど自分の中で忘れられない、記憶に残る名馬たち。これを見つけ、探し続けるのが競馬の楽しみだと思うからです。直感が当たるなんてことはそう滅多にあるものではありませんが、フサイチコンコルドは新馬を勝った時にダービーはこの馬だ!!と確信しそれが現実となり、馬券的にもいい思いをしました。ここ最近はそう思わせる馬が出てこないので寂しい限り・・・。

私が競馬を見はじめてから、世を沸かせた名馬といえばオグリキャップトウカイテイオーナリタブライアンなどでしょうか。時代背景もあったのかもしれませんが、彼らはみな強烈なインパクトを与え、ターフを沸かせてくれました。
そういった意味で最近気になっているのが、現役最強馬テイエムオペラオーの存在です。皆さんの目にはどのように映っているのでしょうか?私には過去の名馬と比べると地味な感じがします。印象に残るレースがあるかと聞かれたときに、真っ先に出てくるレースがない。あのレースが強かった!凄かった!!などのインパクトがない。成績だけが素晴らしく、どうしても“記録だけの名馬”に見えてしまいます。時代背景やライバルなど、別の要素もあるだろうが何かが足りない・・・正直言ってメイショウドトウとの対戦には、全然ワクワク・ドキドキしません。こんな風に思っているのは私だけなのでしょうか?

早く新しいアイドルホースや、ダイタクヘリオスのような個性的な馬など色々なタイプの馬の出現を待ちたい。そして、競馬に対して昔のような情熱を捧げられればいいなと思う、ここ1、2年です。

(2001.9.4)

スタッフの四方山話 第10話
文・丁 h

私は10年前に上海から日本に来ました。来日当時、周囲の人が競馬を楽しんでいる様子を見ると興味が湧きましたが、実際には、自分が競馬のことを全く分からなかったので、他人事のようでしたし、まさか自らが競馬の仕事に携わるなどとは考えも及びませんでした。

ふと子供の頃に聞いた話を思い出しました。80年前に、私の出身地上海では、上海競馬場がありました(現在の上海人民広場です)。
昔の上海では”十里洋場”とも言われ、これは洋人(欧米人)たちの娯楽場でした。1842年、アヘン戦争後、中国の鎖国政策を解きました。外国人が中国で通商港を開港し、国の中の国と言う”租界”を強行でつくり、これとともに欧米の経済、文化を中国に持ち込んだのです。競馬場はこの中の一つだったそうです。

実は、何年か前に中国の広州、北京、深せいに地方経営の競馬場が出来ました、開催日に4〜5万人の観客を集め、盛大に行なわれました。競走馬はモンゴル馬など中国産だけでしたが、中国では、賭博、売春、麻薬が社会三大毒瘤との認識があります。地方経営の競馬は、中央政府が許可したものではなく、あくまでも黙認の形で行われていたものです。ですから、競馬人気が過熱すると社会への影響を恐れていたため、競馬の開催は中止されました。

今年の7月末、私は上海に里帰りした時に、友達との世間話の中で今の日本の競馬事情を話題に取り上げました。競馬のことは、彼達にとって全く白い紙のようでしたが、しかし非常に興味を持っているという感じもしました。私は日本の競馬の馬券の種類、競馬場の景色、調教用のトレーニングセンターなどの話をした後、あることを頭に浮かべました。もし、中国で日本と同じように公式な競馬場が出来たらいいなと。

「中央競馬ワイド中継」のキャスターである長岡一也さんもこの夏訪れたという北京龍頭牧場。私がこの牧場のことを始めて知ったのは二年ぐらい前のこと。ある競馬週刊誌で柴田政人調教師と北海牧場社長の石田勇の対談記事を読んだのがきっかけです。北京龍頭牧場は、石田さんを中心として、日本の生産者による中国で初めてのサラブレット生産グループ事業です。現在中国で生産したサラブレットが国際血統書委員会に承認されていないため「中国でのサラブレット生産に目を向けたのも、つまり先を見据えてのことと言うわけ」なのだと石田さんは対談の中で語っていました。

私は、まだ今は中国が経済の途上国でもあり、社会の貧富差が激しく、日本のように公式な競馬事業を行うのは、まだ現実的ではないと思っていました。ところが、香港、マカオ、オーストリア、アイルランドの(欧州最大手生産者である)クーリモア・グループが、中国に進出して生産事業を始めたそうです。競馬を行うサラブレッドの馬資源が完全に出来ています。中国のサラブレッド血統書が承認されるのは時間の問題ではないかとも考えられます。しかも、北京、上海、大連、重慶など人口500万人から、1000万人を超す大都市の周辺10ヶ所に、競馬場を作る計画が進められています。

勝負精神が強い中国では、大金を持っている人が大勢います、北京市には、現金預金1億円を持っている人が2万2000人もいるそうです。上海でも、広州でも・・・馬事業を投資する資源は十分あります。特に改革開放後の中国には、私有体制の法律が整えられつつあります。

IT情報が発達するとともに、国外の情報が直ちに国民に知らされています。石田さんのような外国人投資家が増えてくれば、中国に競馬が出来る馬生産技術とスタッフの育成をすることができます。近い将来、中国でレースが観られることを心から願っています。そして将来的には、中国で生産したサラブレッドが日本の競馬場で出走できるのを楽しみに期待しています。

(2001.9.11)

スタッフの四方山話 第11話
文・出口 直之

<後半の競馬へ向けての僕の期待馬>

ローカル開催が終わり、いよいよ中央開催に戻りました。
毎週毎週重賞が行われます。そんな中、僕の選んだ秋に是非応援したい馬を何頭か挙げてみたいなあと思います。

まずは3歳馬ですが、なんといっても先週の釧路特別を圧勝したロードプリヴェイルでしょう。まだ500万を勝ったばかりとは言ってもダートでの強さはここ2戦で実証済みですし、芝もデビュー戦で2着しているから平気のはず。これからが楽しみな逸材だと思います。でもウッドマン産駒はヒシアケボノみたいにある所まで登りつめると後はしぼんでしまうというタイプもいるようなので、そうならないでほしいなあ。

そしてエアエミネム。札幌記念の勝ちっぷりは“これは強い!!”のひとこと、でもまだ底を見せていない。今週の神戸新聞杯に出走を予定していますが、クロフネダンツフレームアグネスゴールドとの対決が今から楽しみです。

一方、古馬のほうですが、芝中長距離路線はテイエムオペラオーVSメイショウドトウの“僕的にはもうおなかいっぱい!対決”に任せるとして(?)新星多数登場のマイル路線・ダート路線から何頭か挙げてみます。
マイルからはゼンノエルシド。京成杯AHのレコード勝ちは文句なし。速い流れに楽々とついていったスピード能力は素晴らしいと思います。来週のスプリンターズSに出走の意志があるようですが、1200メートルという距離でのレースぶりが見物。もし圧勝したらこの馬をここまで育て上げた藤沢和雄調教師を素晴らしいと思うべきなのか、それとも他の馬たちに対して“もうちょっと頑張れよ”と言うべきなのか。
さらに私事ですがこの馬を担当しているきゅう務員さんは日頃取材でいろいろ教えてもらったり、いっしょに食事に行ったりと公私ともにお世話になっている方なので是非頑張ってほしいのです。

それからダートはエンゲルグレーセミラクルオペラの2頭。前者はエルムSを快勝して、一躍ダートのG1戦線に名乗りをあげました。注目は父・プラウドデボネアという血統。エンゲルグレーセの他に代表産駒を挙げろと言われても、僕は言えません。渋いですねえ。なんだか損得抜きで応援したい1頭です。ここ最近は岡部幸雄騎手が乗っての活躍ですが岡部騎手にはウイングアローという強力なお手馬がいるんですよね、彼はどちらを選ぶのでしょうか。また、ミラクルオペラは春後半から地力をつけてきた1頭。実は僕がずっと追いかけてきた1頭です(さすがに水沢の馬券までは買えませんでしたけど)。この馬のお母さんはマックスフリートといって公営・笠松の名牝でした。おぼえている方もいるのでは?とにかく秋はこの2頭で王者ウイングアローをなんとか負かしてほしいと思います。

以上、僕の注目馬を何頭か挙げてみましたが“これじゃあ当たり前すぎない?”という意見も聞こえてきそうで、ちょっと心配です。でも、応援したい馬は人それぞれですから。この馬たちに注目しつつ、レースを楽しみ、そして馬券も当たれば最高だと思っています。
よし、頑張って馬券儲けて回転寿司だー!!

(2001.9.18)

スタッフの四方山話 第12話
文・片桐 真樹

いよいよ今週から秋のG1シリーズが開幕します。これから暮れの有馬記念までワクワクする毎日が続きそうです。そこで今回は、古馬・中長距離路線で僕が応援する馬について一言書こうと思います。

この秋の注目は、やはりテイエムオペラオーVSメイショウドトウでしょうか。昨年の宝塚記念から始まったこの2頭でのワン・ツー。配当を転がしていたら、いったいいくらになっているのか計算すると・・・う〜ん\\\凄い!
世の中にはいるんでしょうネ。羨ましい限りです。この2頭に待ったをかける馬はいないんでしょうか?

いや、います。栗東・沖きゅう舎、渡辺薫彦騎手、菊花賞馬。
そう、ナリタトップロードです。今や、すっかり名脇役となった感がありますが、3歳時はテイエムオペラオー、アドマイヤベガ
と並んで3強と呼ばれていました。皆さん覚えていますよネ?しかし、菊花賞を勝ってからは大スランプ。しかし、スランプといっても勝ち運がないだけで、その間にメイショウドトウが頭角を現してきただけと僕は思っています。テイエムオペラオーの元祖ライバルはナリタトップロードなのです。

おととし、菊花賞のレース前に渡辺騎手を取材する機会がありました。その時渡辺騎手は「僕とトップロードの絆は誰にも負けない」と何度も口にしていました。そして、悲願の優勝。
レース後のコメント・・・『これからもオペラオーベガとはよきライバルです』
僕はそれ以来この爽やかなコンビを応援しています。

ようやく今年の阪神大賞典でスランプを脱し、春の天皇賞こそはと思っていたらレース前の不運の雨。またしても、脇役に押しやられてしまいました。

ここまで、大スランプ、乗り替わりと様々なことがあったこのコンビですが、今でも渡辺騎手は「オペラオーがライバルです」と言っています。なぜか僕はそれがすごく嬉しいのです。おそらくオペラオートップロードが一番のライバルだと思っているはず?!

毎年、競馬にはドラマが生まれています。秋のG1レースではどんなドラマが待っているのでしょうか?
今年はナリタトップロードがドラマの主役を演じてくれることを願っています。それが僕にとっての一番の感動のドラマだから・・・。

(2001.9.25)

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