スタッフの四方山話
第155話
文・酒井 純
「アメリカ3冠第3弾・ベルモントSへ 〜カジノドライヴ〜」
取材へ行って来ました!
カジノドライヴ
(美浦・藤沢和雄厩舎)の出走した「ピーターパンS」に。
鞍上のデザーモ騎手が最後は手綱を抑えたままで、後続に5馬身以上差をつける圧勝劇。実際にレースを観た直後の率直な感想は「凄い」のひと言でした。半分、応援も兼ねて取材していた私がそう思うのは、もしかしたら、身贔屓のせい?とも考えましたが、現地の競馬ファンの反応は、こちらが思わず「本当かよ?」って疑いたくなる程の絶賛振り。「ビッグブラウン(この時点で5月3日のケンタッキーダービー[1・1/4マイル]を勝っていて、後に5月17日のプリークネスS[1・3/16マイル]を制し3冠に王手をかけている)の相手はカジノドライヴしかいない」「スーパーホースだ」「ベルモントSの勝ち馬は決まった」等々の声が、ひっきりなしにカジノドライヴに向かってかけられたのです。
ピーターパンS ゴール前
レース後、スタンドや厩舎地区を歩いている時も、あまりお金を持っていそうもない、いかにも馬券大好きオヤジから、馬主さん?って思うようなビシッとスーツを着こなしている紳士まで、ありとあらゆる人々から話しかけられました。
果ては、私がビデオカメラを持っているのを見つけて「カジノドライヴの強さを話してあげるから、俺にインタビューしなよ」という人まで現れる有様。しぶしぶカメラを回しました。被っていた帽子から想像するに、おそらく牧場関係者と思われる人、曰く「
ビッグブラウン
は強いけど、厳しいレースが続くのでベルモントSまで絶好調を維持するのは、大変だと思うよ。デザーモ騎手(ビッグブラウンの主戦騎手)も選択に迷うんじゃないかな」
そのデザーモ騎手は「ビッグブラウンのライバルになるね。絶対に!今日この馬に乗って、お兄さん(
ジャジル
)、お姉さん(
ラグズトゥリッチズ
)がベルモントSに勝っているのがよく分かったよ。距離は延びれば延びる程いいだろうね」と、コメント。
山本英俊オーナーと藤沢調教師
藤沢和雄調教師も「カジノドライヴは細く見える位の胴長の馬なんだな。改めてそう思ったよ。長距離向きの体型だね。まだ腰に甘いところがあるし、これから良くなっていく晩成型なんだよ」と語りました。
次走、カジノドライヴが出走を予定している6月7日のアメリカ3冠レースの第3弾、ベルモントS。距離が1・1/2マイル(約2400m)に延びて、パワーとスピードでここまで相手をねじ伏せてきたビッグブラウンにカジノドライヴがどこまで食い下がれるか?本当に楽しみです。
パドックへ向かうカジノドライヴ
ところで、現在カジノドライヴが滞在を続けるベルモント競馬場。ニューヨークの中心部マンハッタンから車で30分そこそこに位置していながら、実に静かで自然溢れる環境にあります。大きな木々も沢山あり、朝晩は様々な小鳥のさえずりに囲まれ、野生のリスがパドックから馬場に向かう馬道にも出没する程。
そんな環境、そしてスタッフの努力の甲斐もあってか、今回アメリカに遠征した馬たちは非常に落ち着いて調整できたようです。
ピーターパンS前日にベルモント競馬場の厩舎で久々にカジノドライヴと対面した藤沢調教師も「ちょっと神経質なところもある馬で、美浦ー新潟ー成田、更にニューヨークへの空輸と何回も移動があって心配だったけど、これだけ落ち着いていれば大丈夫。3歳馬でここまでしっかりしていられるんだから大したものだよ。いいよ」と笑顔で話していました。
馬房でのカジノドライヴ
もちろん、カジノドライヴ自身の落ち着いた性格が今回の勝利に繋がったのは、言うまでもありません。2歳の入厩時から今回のアメリカ遠征まで、ずっとカジノドライヴに乗り続けている青木芳之騎手はピーターパンSの前に、次のように語ってくれました。「まったく大人しくて手のかからない馬なんですよ。藤沢厩舎の走る馬は今まで、元気良すぎてきかない性格の馬が殆どだったんですけど、この馬は違うんです。間違いなくワールドクラスだとは思うんですが・・・。従順なんですよね。そこが唯一、心配というか不安なところなんです。これで良いのかなぁ・・・と。調教なんか、ちょっとだけ行けって指示すると、ちょっとだけしか行かないし、もうちょっと行けって、指示するともうちょっとだけ動くんです。人間の考えていることを瞬時に理解する能力があるんですかね。アメリカでも全くその辺は、変わりありません」
今回の遠征には
スパークキャンドル
、
シャンパンスコール
の2頭が帯同しているということも非常に大きいでしょう。更にスタッフも日本とアメリカを行ったり来たり。その労力そして金銭面の負担たるや半端なものではないと思われます。山本英俊オーナーの理解、藤沢厩舎のスタッフの協力があって万全の態勢、これまでとはスケールの違う海外遠征が実現したのです。
96年、藤沢調教師は
タイキブリザード
でブリーダーズC・クラシックに挑戦しました。結果は13頭立ての13着と、しんがり負け。それも1着の
アルファベットスープ
から30馬身近くも離される大敗。レース後、うつろな表情で語った、藤沢調教師の言葉が思い出されます。「
シガー
(1番人気で3着)の騎手(J.ベイリー)はゴールが見えたけど、岡部ジョッキー(タイキブリザードに騎乗)には見えなかったな・・・」
どんな暴れ馬でも平気で乗りこなす青木騎手に「この馬は猛獣ですよ」と言わせしめたタイキブリザードの敗戦から、およそ12年。今回は「従順な」カジノドライヴでダートGIに挑戦です。
6月7日のベルモントSまで2週間余り。持っている力を存分に発揮してくれることを願って止みません。そして、出来れば結果も・・・。楽しみに待ちましょう!
(2008.05.27)
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