スタッフの四方山話 第162話
文・坂井 優吾
「幕」
 
普段通っている理容店が、9月いっぱいで店を閉め、20年以上の歴史に『幕を下ろした』。都内に数店舗を構えているが、従業員のやりくりが厳しくなったため、窮余の策を講じたのだという。規模は縮小しても、やはり同じ方に切ってもらいたいので、同じ系列の別店舗へ行くと、いつものお兄さんが「わざわざ遠くまでありがとう」。
 
そこには、本当の感謝の気持ちと、不便をかけて申し訳ないという気持ちと、更に、本当は閉めたくなかったんだけどね…という無念さが滲んでいたような気がするが、深読みしすぎか。確かに便は悪いが遠くはない。旧店舗とは同じ区内。その時は「いえ、いえ」と応じたに止め、これから先も贔屓にすることで、お兄さんの心遣いに応えていきたい。
 
 
12月26日、中央競馬ワイド中継・ハイライトの、四半世紀の歴史に『幕が下ろされる』。
 
四半世紀というと25年、当方はその3分の1も業務に携わっていないので、あまり滅相なことは言えないが、さすがは競馬好きの制作・技術スタッフが集まった競馬中継。テレビ番組としたらかなり異質で、主催者や関東UHF各局のご厚意で、良くも悪くも、制作サイドが好き勝手やらせてもらっている。そのためかどうかは別にしても、ファン心理にいちばん近い放送が出来ていると思う。メインレースを放送出来なくても、メイン以外にも、画面を通じて訴えかける競馬の面白さや素晴らしさがある。そして、それを伝えるに頼もしい、キャスター陣、解説陣―――。
 
 
競馬コラムニストの河村清明さんのブログ記事を無断で借用させていただく。
  関東圏のUHF局で放送されている「中央競馬ワイド中継」が年内で終了予定と聞いた。
噂だから、もしかしたら違うかもしれない。
ただ、BSデジタルで中継を開始するとJRAは発表済みだから、
それに伴う措置であるのだろう。
 
そこで、昨日の午後はあらためて「ワイド中継」を見たのだ。
すると、セントライト記念の馬券検討が始まる直前だった。
コスモバルクの勝ったセントライト記念の様子や、
功労馬として過ごす最近の映像が映り、
さらにキャスターの長岡一也さんがバルクの印象を語った。
 
こうしたさりげない瞬間に明らかなとおり、
「ワイド中継」は、
われわれ「長年のファン」の気持ちがよくわかっている。
柏木集保さんの明快な解説も手伝って、
他局と比べても、
実際にいい番組作りをしてきただけに、
その終了が本当だとすれば非常に残念だ。
 
(河村清明「“競馬場通り”の住人」2010年9月20日の記事、抜粋、一部改稿)
 
 
番組終了がスタッフに伝えられたのが今年4月。何やらしばらく胸の奥がモヤついていたが、溜飲が下がる思いがした。
(2010.12.10)

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